年末は、いつもはあまり出来ない拭き掃除をしたりキッチンを念入りに磨いたり、ラグやカーテンなどもお洗濯し、なんだかとってもスッキリした気分。

 柊哉さんはお仕事の時もあったけれど、比較的ゆっくり過ごす事ができて、一緒に掃除やお料理が出来る時間がとても楽しかった。

 まだ段ボールが残っていた彼のお部屋も一緒に片付けをして、出てきた作りかけのパズルを完成させたり、映画を見たり本を読んだり、一緒にゆっくりと過ごす時間がとにかく心地が良い。

 だけど...この間私が酔っ払ってしまった次の日に聞いた柊哉さんの言葉が、ずっと心に引っかかっている。

 まさか私にあまり触れなかった理由が、理性をコントロールするためだったなんて...。
 正直、最近は少しだけ気にはなっていた。柊哉さんはキス以上のことはしないし、ベッドで抱きしめられてもそのまま眠るだけ。

 忙しくて疲れているだろうし、彼からみたら私は子どもっぽいだろうし、きっとそういう感情にはならないのだと勝手に思っていた。
 でも、我慢していたなんて言われたら...。それは申し訳ないなと思うのと同時に、そういう対象になれている事が嬉しかった。

 けれど私には大した経験もなければ、いたって平凡な身体で自信もない...。
 麻美に言われたように、やっぱりバスソルトで誘うべき...?いや、そんな大胆なこと、それこそ酔っ払ってでもないと出来ないよ...。

 最近は時々そんな事を考えては、どうしたらいいのかなとぼんやりしたり、急に抱きしめられたりするとそわそわと挙動不審な行動をとってしまったり、きっと柊哉さんはそんな私を不思議に思っているんだろうな...。


 大晦日は、二人で年越しそばを食べてカウントダウンをして、笑顔で新年を迎えられた事に心から幸せを感じた。

 最近は以前のような怖さはほとんどなくなり、彼と過ごす時間は素直に幸せだと心から思える。
 きっとプロポーズしてもらえた事もあるけれど、一番は柊哉さんの事を信頼しているからだと思う。



 そして、暖かな日差しと共に穏やかに迎えた元旦。

 今日はまず柊哉さんのご実家に挨拶に伺ってから、私の祖父母の家に行く予定だ。
 彼は明日から仕事になる可能性があるので、今日一日で両家への挨拶を済ませることに決めた。

 そのため朝から少し緊張気味で落ち着かず、鏡の前で何度も確認しながら髪をハーフアップに整えメイクもし、オフホワイトのワンピースにコートを羽織る。
 ようやく支度が終わりリビングに行くと、スーツ姿の柊哉さんが電話をしていた。

 もしかして病院からの呼び出し...?と不安になる私に気づいて、電話をしながらも大丈夫と言うように少し微笑んで頭を撫でてくれる。

 少しして電話を切ると「ごめん、橘先生だよ。でも呼び出しじゃないから大丈夫。行こうか」そう言いながら車のキーを持って、私の手を引き玄関へと向かった。