柊哉side

 どうやら、優茉は盛大な勘違いをしているようだった。
 俺があまり触れない事も、一緒に寝ない事も自分が何かしてしまったから、俺に距離を置かれていると。

 ......本当は、全く逆なのに。

 昨日から、優茉に触れてしまうと今まで我慢できたものも抑えられなくなってしまいそうで怖かった。
 そんな俺の態度を、優茉は敏感に感じていたんだな...。

 そんな風に思わせてしまい申し訳ない気持ちと、どこまで正直に話していいものかと少し葛藤する。

 ...でも、優茉は隠さず気持ちを伝えてくれている。だったら俺も、正直に話さないとフェアじゃないよな。

 「優茉、違う。全く逆だよ」

 「...逆?」

 「そう。優茉が昨日していた事も、もちろん全部話すよ」

 昨日帰ってから髪の毛を乾かしたところまで話すと、彼女は次第に頬を赤く染め、終いには両手で顔を覆ってしまう。

 「すみません、私、そんな事を...」

 「いや、すごく可愛かったよ。それから...」

 優茉の身体を起こして、キョトンとしている彼女の両脇に手を入れ少し持ち上げて俺の膝に乗せる。

 「えっ、あ、えっと...?」

 戸惑っている彼女の身体をぎゅっと抱き寄せて、昨日と同じように頭を撫でる。

 「最後に優茉がした事」

 「...え?」

 「こうしているうちに眠っちゃったから、そのままベッドまで運んで寝かせた」

 「えっ⁈ うそ、私、なんて事を...。すみません、大変なお手数をおかけしてしまって...」

 「謝らなくていいよ。俺は嬉しかったし、可愛い姿が見られたから。
 ただ、一つ大変だった事があって...」

 「私、まだ何か...」

 不安そうに俺を見つめる彼女をもう一度抱きしめる。

 「大変だったのは、俺のメンタル」

 「......メン、タル?」

 「そう、理性のコントロール。昨日からそれが大変で、これ以上優茉に触れていたら、我慢がきかなくなりそうだったんだ」

 「...え?そ、それで、ベッドで、眠らなかったんですか...?」

 「情けないけど、抑えられる自信がなかったから。俺のせいでそんな風に思わせて、ごめん」

 頬を真っ赤にして俺の肩に顔を埋めている優茉。
 そっと身体を離して一緒にベッドに入り、後ろから抱きしめる。

 「今日はちゃんと我慢するから、一緒に寝よう?」
 
 「は、はい」

 消え入りそうな声で返事をする彼女は、しばらくモゾモゾとしていて、なかなか寝付けそうになかった。