七時を過ぎた頃、柊哉さんが帰りに私がリクエストしたお弁当を買ってきてくれて、夜ご飯を一緒にいただく。
「結局帰りが夜になってごめん、家の事をやってくれてありがとう。少しは休めた?」
「はい、なんだか頭が働かない感じがして結局何度もうとうとしてしまいました」
「そっか、優茉は本当にお酒は弱いんだな。あと、マフラーの件もごめん。伊織に何か言われた?」
「あ、いえ。えっと...、なんというか、とても明るくて可愛らしい感じの方ですね」
「ははっ。まぁ、昔からおしゃべりなやつではあるかな。可愛らしいのは見た目だけで、中身は腹黒いってよくもう一人の幼馴染のやつが言っているけど」
「そ、そうなんですか? 昨日はお友達と会っていたのに、迎えに来て頂いてすみませんでした」
「気にしなくていいよ、ちょくちょく会っているやつらだから。昨日も優茉を迎えに行くって言ったら、伊織が会いたいって騒いでいたんだ」
そ、そうなんだ...もっとちゃんとメイクもした姿でお会いしたかったな...。
「あ、あの。昨日は家に帰ってからもご迷惑おかけしましたか...?何度考えても、やっぱり思い出せなくて...」
すると一瞬、箸を止めて朝と同じように目を逸らされる。
「いや、迷惑なんて思っていないし、むしろ嬉しかったけど...なんと言うか、少しいつもより幼い感じだったってだけ...かな」
幼い、感じ...?
「あの、具体的には...?」と聞いても、うーんと言い淀む柊哉さん。
結局その後違う話になり、詳しいことは教えてもらえなかった。
片付けを終えると、柊哉さんはやる事があるそうで部屋へ行ってしまい、私はゆっくりお風呂に入ったりぼんやりとテレビを見たりして、あまり眠くはないけれど早めにベッドに入ることにした。
柊哉さんに「おやすみなさい」と声をかけると、寝室まで一緒に来て「おやすみ」と軽く抱きしめて前髪にキスをしてくれたけれど、すぐに離れてベッドに腰掛ける。
...なんとなく、今朝から少し距離を感じる。
やっぱり昨日何かしてしまったんだ。具体的に何も教えてくれないし、柊哉さんに嫌われるようなことを...?とだんだん不安になってきた。
それを隠すように毛布に潜ると「優茉?...どうした?」と心配そうな顔でめくられる。
「...一緒に、寝てくれますか?」
「優茉が眠るまでここにいるよ」
やっぱり、今日も抱きしめて寝てくれないんだ...。なんだか悲しくなってきて、気づけば涙目になっていたみたいで...
「...優茉?どうしたの?」と少し困ったような顔で、優しく頭を撫でてくれる。
「...なんでも、ないです」
慌てて目元を拭ったけれど、その手を取られて「優茉?教えて、優茉の気持ち」と真剣な眼差しで見つめられる。
その瞳に逆らえなくて、思っていた事を少しずつ話し始めた。