気がつけばうとうとと眠ってしまっていたようで、一時間ほど時間が経っていた。

 本当に久しぶりにお酒を飲んだせいか、まだ頭がぼんやりとして脳が働いていない感じがする。

 とりあえず洗濯物を畳んで片付けていると、スマホの着信音が響いた。

 「もしもし?」

 「優茉?俺だけど、家のインターホン鳴ったりした?」

 「え?さっきまでちょっとうとうとしていましたけど、インターホンは鳴っていませんよ?」

 話しながらモニターを確認したけれど、何も履歴は残っていない。

 「どなたかいらっしゃるんですか?」

 「実は昨日バーにマフラーを忘れたんだけど、友人の一人で相馬 伊織というやつが預かっていて、仕事のついでに届けると言っているんだ。
 俺はまだ病院にいるからそっちにと頼んだんだけど、優茉を一目見たいって聞かなくて。
 悪いんだけど、もうすぐ着く頃だと思うから受け取ってくれる?あいつも仕事の途中だろうし、すぐに帰ると思うから」

 「わ、わかりました」

 柊哉さんのお友達...。どんな方なのか分からないので少し緊張しながらも、とにかく部屋着からワンピースに着替え待っていた。


 柊哉さんの電話から十分ほど経った頃インターホンが鳴る。
 思わずドキッとして、恐る恐るモニターを覗くと、カメラに向かって手を振っている人の姿が...。

 「は、はい!今開けますので、どうぞ」

 モニター越しにありがとう〜と微笑んでいる優しそうな甘いルックスをした長身のスーツを着た男性。

 すぐに玄関のチャイムが鳴り、一応モニターで確認するとまた手を振っている...。急いで玄関へ行きドアを開けると...

 「うわぁ、可愛い!突然ごめんね?柊哉から話聞いてる?」と満面の笑みで顔を覗き込まれた。

 「は、はい。あの、マフラーを届けて頂いたと...」

 「そうそう!これね。俺は柊哉と幼馴染の相馬 伊織です。ちなみに職業は弁護士だから、何かあったら話聞くよ?いつでも電話して?」とマフラーが入った紙袋と名刺を頂く。

 「あ、すみません、名刺は持っていないんです。あの、脳神経外科でクラークをしています宮野 優茉と申します」

 「優茉ちゃんか。名前も可愛いね!一度会ってみたかったんだよ、柊哉が溺愛する婚約者さんに!」

 「で、溺愛⁈」

 「うん、柊哉って昔から恋愛には淡白だったんだよ。でも、ずっと優茉ちゃんを探し求めていたからだったんだね!」

 え? ずっと...?

 「あ、すみません、上がって行かれますか?」

 「ううん、長居したら柊哉に怒られるから帰るよ。でも本当によかったよ、うんうん。
 あ、柊哉って意外と寂しがりやだからさ。たくさん構ってあげてね?もちろん優茉ちゃんから甘えてあげるのもすごく喜ぶよ!
 これからも柊哉の事よろしくね!そうだ、もう一人幼馴染のやつがいるから、今度みんなでご飯でも行こうね〜」

 そう手を振りながらあっという間に帰られた。

 な、なんだか、とても可愛らしい感じの方だったなぁ。背も高くて、柊哉さんもだけど黙っていたらモデルさんのよう...。でも弁護士さんって...すごい...。
 やっぱりお友達もハイスペックな方達ばかりなのかな...?

 そんな事を考えながら、柊哉さんのお部屋にマフラーを置きに行き、ふと鏡に映る自分を見て驚く。

 えっ...私、着替えて髪の毛も整えたのにメイクしてなかった...。ぼんやりしていて頭が回らなかったのかな...?
 はぁ、もう今更どうしようもないけれど、落ち込む。
 とりあえず柊哉さんにメッセージを送ってから、ソファで本を読み始めたけれど内容が全然頭に入って来ず、結局一日中うとうとしてしまった。