柊哉side

 日曜日の今日も優茉を一人にしてしまうのは申し訳ないが、昨日院長と約束したので病院に行かなくてはならない。

 朝ごはんを軽めに用意してくれて、俺が食べている間に優茉はケーキを切り分けている。

 「本当に無理していませんか?帰ってきてからでも...」と苦笑いしながら、小さめにカットしたケーキを俺の前に置いた。

 「ありがとう、昨日からずっと食べたかったから。帰ってきてからもいただくよ」

 「無理しないでくださいね?」と再度念押ししながらも、自分の分も切り分けてテーブルにつく。

 ようやく二人でケーキが食べられるな...

 甘さ控えめのクリームにいちごがたくさん使われたケーキは、朝でもぺろっと食べられてしまうほどとても美味しかった。

 そして、甘いものが大好きな優茉が嬉しそうにクリームたっぷりのイチゴを頬張る姿は、見ているだけで幸せだ。
 たまらず席を立って優茉のそばまで行き、キョトンとしている彼女の顎をすくって唇を合わせる。

 「っん...」

 いちごを含んだままの優茉の唇は、ケーキよりも甘い。口の端についたクリームを舌で舐め、見つめ合ってからもう一度唇を食べる。
 わざと音を立てて離れれば、いちごのように真っ赤になる優茉。

 「ふっ、優茉の方が甘いな」

 さらに頬を染め俯いてしまった彼女を残し、食器を下げてコートを羽織り玄関に向かうと、パタパタとまだ頬をほんのり赤く染めた優茉が追いかけてくる。

 「ケーキありがとう、すごく美味しかったよ。今日は夕方には帰れると思う。優茉はゆっくりしていて」

 「わかりました。お気をつけて」

 左手を伸ばすと優茉からハグをしてくれて、少し身体を離して見つめてみる。またキョトンとしているので、背を屈めて彼女の顔の前で目を閉じてみる。

 目を閉じていても彼女が動揺しているのが分かったが、そのまま待っていると俺の頬に手を添えて軽くちゅっとしてくれ、俺からもお返しのキスをしてから玄関を出た。



 年末のバタバタは先週で落ち着き、今年最後の一週間は比較的穏やかに過ぎていった。
 俺はオペの予定も入っていないので病棟や医局にいる時間が長く、時々優茉の顔を見に行ったりしながら溜まっていた書類を片付けた。

 そして、今年最後の勤務を終えた彼女は天宮さんと二人お疲れ様会をするそうで、帰っても家に優茉はいない。
 なので、俺も親友二人に声をかけ馴染みのバーへと足を運んだ。