その週末、先生は今日もお仕事なので麻美とプレゼントを買いに行く約束をしていた。

 お昼頃に待ち合わせをしてフレンチトーストが有名なお店でランチをしてから、百貨店に来ている。

 「麻美は何を買うか決めてるの?」

 「うん、今年はベルトにしようと思っているの。彼毎日スーツだし、ネクタイはもう何回もプレゼントしたし」

 相変わらず麻美は決断が早くて迷いがない...。

 「優茉はまだ迷ってるんでしょ?」

 「うん...。でも柊哉さん、意外と寒がりだから何か温まるような物がいいかなぁって」

 柊哉さんはもこもこ素材のパジャマを着て一緒に布団に入っていても、朝はいつも手足が冷たい。
 男性は体温が高いイメージがあったけれど、柊哉さんは冷え性なんだと最近知った。

 「なるほどね。じゃあ、無難にマフラーとか?それとも...こういうのはどう?」

 そう言って麻美が手に取ったのは、充電式のカイロ。
 仕事中でもパソコンで充電ができて、寒い時に指先を温められるかな?でも、プレゼントがこれ一つというわけには...
 迷っていると、麻美はまた別の物を提案してくれる。

 「私のおすすめはこっちかなぁ。これなら二人でゆっくり温まれるし、今の時期はピッタリじゃない?」

 「えっ? これって...バスソルト?」

 「そう。私もプレゼントしたことあるけど、今日はどれにする?って一緒に選んで入れるのも楽しいよ?」

 そ、そうなんだ...やっぱり一緒にお風呂に入るのは普通のことなんだ...。

 「もしかして...こんなに一緒に暮らしててまだえっちもしてないの?」

 「ちょっ、ちょっと!そんなことお店の中で言わないでよ」

 「うそでしょ...?毎日同じベッドでただ眠るだけなの?」

 「う、うん。いつも抱きしめられて眠るけど、そういう事には一度も...」

 「信じられない...彼、相当ね...。きっと優茉が大事過ぎて手を出せないのね」

 「そ、そうなのかな?そういう魅力がないのかなって最近ちょっと思ってるけど...、でも私もハグだけで満足しちゃってるし」

 「そんなわけないでしょ!それにハグで満足って...中学生じゃないんだから...。
 だったらなおさらこれにしなさい!それで一緒に入ろうって優茉から誘うのよ。じゃないと彼が大変よ?」

 「そ、そんな事出来ないよ!前にお風呂も誘われたけど、断っちゃったし...」

 「ほら、やっぱり彼は優茉の気持ちを優先してくれるでしょ?自分が我慢してでも、優茉がOKだすまで待っててくれるつもりだよ。だから優茉から言ってあげないと!」

 うーん...そうなのかな?私から誘うなんて、引かれない?それに、あまりそういう経験もないから自信なんてないし...
 でも、もしも柊哉さんが我慢しているならそれも申し訳ない...。

 「はい、迷ってるなら買うべきだよ!もうカイロとバスソルトとマフラーのセットにしたらいいじゃない」

 たしかに決められないし、もう麻美の言う通りにしてみよう。
 誘うかどうかは、別だけど...。

 久しぶりに来た街はイルミネーションの光に彩られ、浮き足だっていた。
 最近はマンションと病院の往復しかしていなかったから、クリスマスが近い事を初めて実感した。

 前に横浜に行って以来、柊哉さんとお出かけは出来ていない。
 もう二十七歳だし、クリスマスがどうのと言うつもりもないけれど、綺麗な景色を一緒に見て同じ気持ちになれるのってとても素敵なことだよね。