「あのっ、速すぎます…!ハル様っ」


「…いや、前よりもまた遅くなってる」


「それでですか…!?あっ、そうじゃなく重いです私っ、自分で走れますから下ろしてください…!」


「軽すぎるくらいだ。…怪我をさせたくないから、黙ってじっとしていて」


「っ…」



彼は私を担ぐように軽々と抱きあげ、甘く囁き、風を切る。

人間ひとりを抱えながら走っている速度とは到底思えないスピードで、夕暮れに染まった温泉街を下っていった。



「おっと、お前はいつも遅いというのに今日は一段と早かったじゃないか。タクシーでも───、ん…?徒歩、か?」


「は、はい…、走ってきました」



とんだ助っ人が来てくれたので、と。

初めましての顔ぶれに、義父は疑いの目を向けながらも私の隣に並んだ存在へと会釈。