「す、すぐに向かいます…!」



まずは業者に連絡するべきか、とりあえずは向かうべきか。

考えながらも電話を切ったが、これだけはと優先的に山林館の一間へ出向く。



「ハル様、ご夕食でございます」


「ああ、いつもすまない」


「今日は何か思い出されましたか…?」


「……いや、そこまでは」



なぜかホッとした私。

ふたりでツクモさんのところへ向かってからというもの、彼は一点を見つめて真剣な顔をすることが増えた。


そんなときは必ずそばに居てあげたい思いに駆られるのだけれど、それはダメと、透子さんの姿を目にしては戻される。



「一咲、前に言っていた…、きみの婚約者の───」


「申し訳ございませんハル様。今日は急ぎの用がありますので、失礼いたします」



普段であれば、もちろん聞いていた。

彼から投げかけられる言葉はわずかだとしても、聞き逃すだなんて惜しいことだ。