「はい、はい、……えっ」



私のもとに1本の電話が届いたのは、ツクモさんの研究結果はまだかまだかと待っている、ある夕暮れ時のことだった。


“公衆電話”と表記されたスマホ画面。


思わずハル様へ届けようとしていた夕食を中断させてまで、サービスワゴンの動きを止めた。

1升のおひつが必須の、サービスワゴン。



『車だけじゃなくスマホの充電も切れてしまってな、ちょうど近くに公衆電話を見つけたんだ』


「だ、大丈夫なんですか…?エンストって…」


『ああ、やられた。悪いが来てくれないか一咲。宿からそう離れていない坂の下にいるから』



公衆電話を使ってまで私を頼ってきたのは、まさかの義父だった。

夕食時の宿にとって人の手が減ることはご法度。


その日は宴会予約が数件入っていたこともあり大忙し。

ので、たとえ減ったとしても戦力としては変わらない私に頼んできたのだろうとは察した。