「じゃあ、すぐ戻ってくるから」


「…必ず…戻って来てくださいますか?」


「…………」



ハル様のそでを掴んでまで、そんなことを。

このまま消えてしまうんじゃないかと、なぜか一抹の不安が過った。


振り返った彼は私の目線に合わせるように屈み、あたたかでせつなく、ほほえむ。



「俺は待たせすぎて最低な男だが……約束する、必ず」



ぜんぜん待ってない……。
それからすぐ、本当にすぐだった。

すぐ過ぎて、もうワケがわからないくらいに。


5分もかかってない。


ツクモさんの家から10分は歩いた場所だというのに、往復として3分弱ほどだろうか。

じかん……、数えておけば良かった。



「ごめん、予定していたより待たせてしまった。もっと速く行けると思っていたんだが…」



そこは安心していいところなんじゃないかって、思う。

これ以上速かったら……どうしよう。



「もしかするとハル様は、有名な陸上選手だったり…」


「…はは。どうだろうな」



記憶喪失で、特殊体質(?)で。

隣を歩いていると、幸せな気持ちと同じくらい泣きたくなるひと。


いちばんは彼と“話せる”ことが、私はこの上なく嬉しいのだ。