「こんな…感じです」


「…………」



描きながらそういえばと思い出した。

中学生のときも高校生のときも、私は美術部からの誘いが絶えなかったこと。


授業でもクラスメイトの見本にされたりして、おかげで女の子たちにハブられてしまった出来事でもあったっけ…。



「…俺はきみの絵が好きだ」


「……そう…ですか」



重ねているんだろう。

あなたの心に存在している人もまた、絵が得意だったんだ。


うれしくない。
うれしいのに、うれしくない。


1枚の紙切れを手にして、また泣きそうにも見える優しい顔をしたハル様。



「一咲の絵が」


「…!」


「一咲。…とてもきみに似合う、いい名前だと思った」



このひとは工藤 音也とは違う。
ぜんぜん、なにもかもが、ちがう。

たったいま思っていた負の気持ちすべて、広大な海に流れてしまった。


彼は私のことだけを見てくれている。