「ワシは天才だった。世間は自称だのヤブだの言っておったが、様々な研究機関からの誘いを断れたくらいには天才よ」



温泉まんじゅうを食べていたおじいさんじゃない。

まったくの別人が私たちの前に頭角を現したかのように、言葉ひとつで納得させられるのもまた、才能。



「そんなワシが当時どんなにどんなに分析しても解けず、何度も何度も敗北を味わわせてきた超難問が……」



シンと訪れた数秒間の静寂。

老人と青年が静かに見合う横で、私は分かった気になって大人しくしていた。



「まさか今になって、今さらになって、わざわざ自らの足でやって来てくれるとは。…ふざけるでないぞ、オスめ」



それから深く調べるためにハル様の唾液を摂取したツクモさん。

新しいことが分かり次第、後日連絡をすると言われ、私は自分のスマートフォンの電話番号を書いたメモを渡してツクモ診療所を出た。