だんだん彼の瞳が地面に落ちてゆく。
ぐっと握られたこぶし。

思わず私はそっと包んであげたかったのだけど、できなかった。



「そうじゃない、…そうじゃないんだ、」



弱々しく、震えた声で繰り返される。

そんな姿に堪忍したのか、助け船を出すように口を開いたのはツクモさんだった。



「ただ、もっと昔、それと類似したものが国の機密事件として起きた。
ワシも学生の頃は真意を突き止めたくてかなり研究したものだったが、諦めるしかなかった唯一の難題での」



それは遺伝子組み換えでなく、もっと恐ろしいものであった───と。



「明治の時代に開発された物質の正体を、昭和平成、この世になってもなお暴くことができなかった惨めさが分かるか?」



怒りを含んでいるようで、おじいさんの眠りかけていた熱を再び呼び起こしたのだと感じる。