「おうおう、器物破損で逮捕だわい」


「「っ!!」」


「まったく。うちの立派な門を壊しおって」



と、高い場所から聞こえた声。

ぐいっと腕を引いてまで、私を背中に守るように隠したハル様。


2階の窓、伸びきった髭に丸メガネを合わせたおじいさんが見下ろしていた。



「この近辺にツクモさんという方がやっておられる診療所があると聞いたのですが」



朝、頬いっぱいに詰め込んでモグモグと朝食を食べていた彼とはまた違った一面。

やさしく微笑む顔も、いじわるに試す顔も、今みたいに恐れなく前に立つ勇敢な姿も。


ひとつひとつ見つけるたびに、新しい気持ちが芽生えそうになる。



「この町のツクモはワシしかおらぬ」


「では、診療所は…」


「ここだが?」


「いや、ですがここは…」


「あるだろう、そこに。ほら看板」



貴様らが踏んどるそれよ───、

言われてからハッと同じ動きをして私たちは踵(かかと)を浮かせる。