─────“ハル様”。
忘れたくないと、きみの記憶が流れてくる。
淡く優しい、あたたかな想い出のなか、きみはいつも物陰でひっそりと、目立たず仕事をしている子だった。
人よりできないことが多かったきみは、誰よりも“口と手”を動かしていた。
俺は、そんなきみに惹かれていた。
“また、来てくださいますか…?”
『約束する、必ず。だから待っていて欲しい』
俺はきみを見つける瞬間が好きだった。
花の蕾が風にさらさらと揺られるように小さく笑うきみが、好きだった。
声なき笑顔が、いとおしかった。
こんなことになるのなら、1度だけでも抱きしめておくんだった。
「24番、実験成功なり」
なぜ、なぜ。
なぜそんなにも安堵に満ちた顔をしているんだ、父さん。
「千歳(ちとせ)の時を越える我が息子よ、─────……どうかしあわせに」
崩れ落ちる戦艦から追いやられるように。
ひとつの保管庫は、涙を流しながら敬礼で見送る父親の手によって、暗闇のつづく海底へと放り投げられた────…。