「こちらのほうが落ち着く」



それだけは風の音に邪魔されず聞こえてきた。

じいっと上目遣いに見つめられながらもドライヤーを当てつづけた私を、だれか褒めてはくれませんか。



「…ふっ」



たまに繰り返される、とろけるような微笑み。

どうしたって目に入ってしまうため、手の動きが度々とリズムを崩しそうになる。



「……よし、終わりました」


「…なんか、すごく眠くなるな」



それは逆をいえば、力加減だったり温度だったりがちょうど良かったということ。

褒められた気分になって、知らないままにも目尻が下がった。



「ハル様、これから一緒に病院へ行きませんか…?」


「……病院?」



ピリリと凍てついた空気。

そうじゃないと訂正するためにも、私は続ける。