不思議な感覚だ。

彼は知らないことが多いようで、見方を変えると私が知らないことをたくさん知っているようにも思える。


ただ、安心してもらいたい。


気はつかわないでください、と。

こちらが勝手にしている親切だと思ってください、と。



「───とても良い湯だった」


「っ!」



シーツ、枕カバー、布団カバー。

彼が温泉に行っているあいだに取り外して、すばやく室内の清掃も済ませる。


ある意味初めての温泉になるのかな…?
熱すぎてびっくりしちゃわない…?


そんなふうに想像を膨らませながら作業することがなんとも楽しくて。


いつの間にか過ぎていた時間と、背後からかけられた声。

私の肩は大きくビクンと飛び跳ねた。



「あ、すまない。驚かせるつもりはなかった」


「い、いえ…。ご満足いただけたようで何よりです」


「すごいな、あの画期的な…レバーをひねるだけで熱い雨が降ってくる装置。使い方が分からなかったから、隣にいたおじさんに丁寧に教えてもらったよ」