『もう、また泣いているの?時榛』


『おかあさんっ、おかあさんっ』


『まったくあなたって子は。転んだだけで泣かないの』


『しんじゃうっ?ぼく、しぬ…?しにたくないよおおお怖いよおおお…っ、うわぁぁぁんっ』



俺は昔から怖がりで小心者だった。


陸軍に比べ、生存率が高いと言われていた海軍。

ご立派な心構えなど、覚悟など、実際は持ち合わせてやいなかったのだ。


父親の立場を出(だし)に使ってまで、俺は生きることに執着していただけ。


そうか、天罰が下ったんだな───…俺は。



「時榛……ッ」


「…とう…さん」



俺に気づいた父親。

この状況下、体勢を崩すことなく立つ息子の姿に目を大きく開いて手を伸ばしてくる。



「さっ、さわるな…!!」


「…俺を恨んでくれていい。だが、お前だけが俺の誇りだ」


「っ…」



微笑みが、やさしかったから。


茫然と立ちすくんでいるあいだにも、重圧な素材で造られた箱形の機械へと閉じ込められた身体。

外側に付属されたメモリを操作された途端、すうっと意識は遠のいてゆく。