「あ、それと。…三森(みもり)さん、昨日で辞めたのよ」
「……え」
三森さん。
それは思い出すだけで恐怖が駆けめぐる、昨夜私に襲いかかってきた調理スタッフ。
今だって小さく小さく身体が震え出した。
「なんかね、逃げるように荷物まとめて朝には寮から消えていたんですって。…ふ、鼻にティッシュ詰めながら」
透子さんは想像笑いを響かせた。
それほどマヌケな顔をしていたのだろう、彼から茶筒攻撃を食らった中年男性の姿は。
「昨日の夕方までは普通だったわよね?あなたのところに雑炊も運んでいたらしいし。
…なにか知ってるんじゃないの?」
「…いえ…、知らないです」
そういえば今朝の朝礼にも揃っていなかった気がする。
まだ新しい顔だったこともあり、そこまで目立つ人ではなかったからか、周りの従業員たちも変わらず過ごしていた。