つまり透子さんもまた、花江家の遠い親族であった。
当家である花江家の分家にあたる家系の娘らしいが、そのあたりは私も詳しく把握していない。
たしかなことは、とても深くて広い血族だということ。
内情の中枢部分でもある軸があやふやでないからこそ、歴史ある宿を守ってこられたのだろう。
そんな透子さんは透子さんで頭の切れるひと。
今もなるべく事を大きくしないよう、私に提案してくれているのだ。
「支配人は夜まで出先の用だし、団体予約も入ってない。周りにはうまく言っておくから、これはあなたの今日の仕事。彼の看病を頼まれたのは一咲でもあるんだからね」
「……わかり…ました」
思い出すかもしれない。
なにか少しでも新しいことをしてみると、忘れてしまった記憶がひとつひとつ。
きっとそれをハル様も望んでいる。