「まずは今日、病院に行ってもらうのがいいんじゃないかなって…。詳しい病名だったりが分かるかも…ですし」


「…服すら着ていなかった人なのよ?なにか危ない事件に巻き込まれて逃げて来ただけかもしれないでしょう。
そういう人を匿うってことは、この旅館にとってもかなりのリスク───…、」



言葉が止まった透子さん。


だれか別の人間が来たのかと、思わず私は付近を見渡してみるが、そうではないらしい。

ずっと気になっていた“何か”を、ここで思い出したようだった。



「亡くなったお爺様の昔からの知り合いにね、ヤブ医者って評判だけれど、個人医を設けている人がいた気がするわ」


「…ヤブ医者…」


「そう。若い頃は学者さんをしていたとかなんとかで」


「すごい…」



小説でも必ずと言っていいほど、どうしてそんな人間と繋がりがあるの?なんて場面が出てくる。

そうやって人脈を広げて謎を解き明かしていって、主人公は記憶を取り戻してゆくのだ。