「それほどうまいってことかな」


「よ、よかったです…」



広がってしまった緊張を解すために見せられた、笑顔。

なぜか、なぜか、そんなものがとても懐かしく感じた。



「……そんなにまじまじ見つめられると」


「───っ、す、すみません!」



見惚れていました、とは言えない。

ただ、爽やかな風吹く丘を彷彿とさせる屈託のない笑顔がいいなあって、単純にそう思っていたのは事実。


そして彼もまた、私を見つめてくれていたから。


数秒間に渡って合わさっていた互いの目。

どうしてそこまで優しい顔をしているんだろう?と不思議になって数秒、耐えられなくなった私たち。



「あっ、汁物のお代わりもあるかどうか聞いてきます…!」


「いや、もうこれ以上はさすがに申し訳ない。…できればきみには、ここに居てほしい」


「……はい」



覚えていないね、やっぱり。

昨夜、あれから眠ってしまったハル様は。
ずっと私の手を握っていたこと。