外に広がる青から獲れた海の幸、料理人が妥協なしで腕を奮う和食。
朝からこんなにご馳走が出るの…?と、毎度のこと驚かれる宝箱のような朝餉。
「普段からこれくらい食べられるのですか…?」
「…いや、そこは普通だったかな」
「“だった”…、もしかして記憶、思い出しましたか…?」
「あ、いや、たぶん、普通の量を食べていたんじゃないかって…、たぶん、だよ」
「…そう、ですか」
あまりよくない質問だったかもしれない。
記憶がないことで誰よりも苦しんでいるのは本人なのに。
不躾だった。
今のは思いやりに欠けていた。
「俺も…まさか自分がこんなにも食べるとは驚いた」
空いた自身の左手を見つめ、握って、パッと開いて。
たったそれだけの仕草のなか、彼は何を思ったのだろう。