「そういえば彼の具合はどうだ?ぜんぶ任せてしまってごめんよ」


「…意識も戻って、少しだけお話ができたの。いまは落ち着いて眠っているわ」


「そうか。助けてしまったのは俺だから、しばらくはゆっくりしてもらうといい」


「……ええ」



私はそちらが心配なのです。

こんな時間を過ごすくらいなら、彼の看病を付きっきりでしていたい。


あなたと私の“ふたりだけ”が、どれほど恐ろしいことか。


もちろん社員寮は完備されている華月苑だが、私たちが使うことはない。


「婚約者なのだから近くに家でも建てたらどうだ?」と、周りの人間たちは勧めてきたが、そこもまた工藤 音也という、なぞの責任感だけは持った男だった。



『正式に婚姻するまでは、と決めているんだ。それにこの場所に拠点を置いておけば、いつどんな問題が起きた際も出られるメリットがあるからな』



まだまだ半人前な一咲のためにもなるだろうし───と。