「…150年…、きみはもう、病院にもいないか」


「え…?病院は私ではなく…あなたのほうが、」


「…ああ、…そうだったな」



私がひとつひとつ話すたびに質問してきては、丁寧に答えると「そんなものがあるのか…」なんて反応をしてくる。



「俺はどうやら夢を見ているらしい」


「…夢…?どんな、ですか」


「見たことないものばかりに囲まれた…明るすぎる世界に来て…、想像もできない話を聞かされ、とても可愛らしい女子(おなご)に……看病を、されて、」



きみが、声を出している───…、

と、彼が夢のなかへ入る寸前、最後に小さく言われた気がした。



「…おやすみなさい。…ハル様」



初めてだった。
私の顔を、目を見て話されたことは。

とても嬉しかったけれど、私はそういった生を歩く運命なのだと、つくづく思わせられる。


あなたもまた、私を誰かに重ねて見ていたから。


少々汗ばんだ髪を撫でることはやっぱりできなくて、代わりにそっと布団をかけなおした───。