「きみが俺の看病を…?」


「は、はい」


「…すまない。迷惑をかけてしまったみたいだ」


「いえ…。私には、これくらいしか」


「十分だよ。ありがとう」



柔らかな微笑みに心を奪われそうになりつつ、ふと異変に気づく。

また熱が上がってきているように見える。


さっきまでは驚くほど順調に下がっていたというのに、不思議だ。



「今日はゆっくり寝ていてください」


「…眠気がないんだ。いろいろ驚くことばかりで…寝られそうにない」



小さな子供みたいな理由にクスっと笑いそうになり、ギリギリで耐える。


記憶喪失……。


よくよく考えたら記憶が何もないということは、とりとめのない不安でいっぱいのはずだ。

こんなにも冷静でいられるほうがすごい。


私はできるだけ優しく言い聞かせてみる。



「ここは安全な場所なので…安心してください。まずはしっかり身体と脳を休ませてあげて…お腹が空きましたら、こちらの……お粥を、」


「…できることなら食べたくないかな」


「ふふ、…お粥に罪はありませんから」