「いずれはあなたが教育する立場になるのよ」なんて毎日のように口を酸っぱくしてまで言われるが、できることならずっと下働きでいたい。


こうして黙々と掃除をすること。

私に自慢できることがあるとするなら、たったのこれだけ。



「俺は…、どう…なった…?」



そして一通りの掃除が片付くと、彼はおそるおそる探るように聞いてくる。



「海岸脇に倒れていたらしく…」


「……かいがん、」


「熱もあるようで、今日は天気も荒れていますから…、明日には病院に行かれたほうがよろしいかと思います」


「…びょう…いん」



カタコトではないものの、繰り返される同じ言葉。

そして部屋を見渡して考え事をしているかと思えば、なにか気になったようで薄型の長方形に近づいた。



「…これは……?」


「え…、テレビ、ですが」


「てれび…?」



この人は何を言っているんだろう…?

私が首を傾げると、「いや…なんでもない」と言って頭を振られる。