「……具合のほう……は、」


「…………」



振り絞った声で、問いかける。

押し倒されたままの格好でお客様優先としてしまった私は、今回ばかりは状況的に間違っていたかもしれない。


じいっと顔を見つめてくる彼、どこか言葉に迷っていた。



「…きみに…大事はないか」


「……はい」


「…震えている」


「……雨が…、降っております、ので」


「……あめ、」



言葉に迷った次は視線に迷ったらしい。

私からふいっと顔を背け、「せめてなにか羽織ってくれないか」と、独り言のように伝えられた。



「すっ、すみません…!」



ああちがう。
申し訳ございません、だった。

透子さんがいたらため息を吐かれていたことだ。


すぐに身体を起こして背を向け、乱れた着物をなおす。