「………、」



どこにいるか分からないんです。

彼はスマートフォンも持っていない人だから、連絡手段もない。


私が傷つけて追い出して、静かに背中を向けて行ってしまった。


もしかすると明治の世に戻ってしまって。

帰るべき場所に帰って、待つべきひとを抱きしめて。


もう、私が届く場所には居ないのかもしれない。


瞳が揺れる私に、透子さんは笑いかける。



「花江家は、ここは、あなたの実家でもあるわ。なにかあったらいつでも帰ってきなさい。……そのときは2人で」



まずは会いたい。

とりあえず走りやすい私服に着替えるだけでいい。


まずはそれだけでいい。

そうしたら走って、彼を探すの。



『俺が通っていた海軍兵学校が、今は小さな博物館になっているらしいんだ。本当はそこに…、一咲を連れて行きたかった』