「どっ、どうしてですか…!だって一咲さんは当主の…!」


「そうですよ…!来年には婚姻が決まっているんでしょう…?」


「いくらなんでもクビってっ、それに一咲さんは会長の娘さんじゃありませんか…!」



みんなが代わりに言ってくれる。


私なんかそこまで役立つ働きはできなかったというのに、仲間たちが納得いかないと声を上げてくれた。


よりによって私だけ……。

新しく作り上げる華月苑に、私だけがユニフォームを着れないのだと。



「まあ待て。ここにすべて書いてある。読むから、静かにしなさい」



ふと、音也様と目が合った。


く、び───、

その口パクに、計3回も伝えられてしまった私。



「一咲は声も小さい、返事も遅い、常にマイペース。ハッキリ言ってこの旅館の仲居には向いていない。そして俺の嫁も、そんなもので務まるわけがない」



よって、クビだ。

という、容赦ない単語が4回目。