「方針って、新しいルールとか…?」
「もしかすると誰かへの解雇命令かもしれないぞ…」
「さすがにそれはないでしょう」
「いいや、工藤さんならやりかねないんじゃないか…?華月苑の未来を常に考えている方なのだから」
ひそひそ、ひそひそ。
私も混ざった気になって右に左にキョロキョロと顔だけを動かす。
あれから音也様は退院して、華月苑に戻ってきた。
主に裏で経営業を仕切り、声がなくてもパソコンを使って華月苑を引っ張ってくれている。
それはそうと手紙だ。
はやく読んでください、お義父様。
「まず、人手が足りなかった仲居を増やし、ひとりひとりの平均勤務時間を減らす。もちろん給料は変わらず支給するが、昇給チャンスを増やし、君たちが働きやすい環境を作る」
そこにはみんなの予想が吹き飛ばされる、とても良いことが書かれてあった。
お客様と従業員のことを第一に考え、より良い華月苑にしていく方針が。