お義父様がいて複雑だとか、音也様の目に入りたくないから、とか。

今はもう、そんな気持ちはこれっぽっちも持っていない。



「このたび正式に音也くんには華月苑の当主になってもらうことになった。そして私が、会長となる」



わかっていたことのはずが、ざわっとどよめきが上がる。


それもそうだ。

私たちの婚姻を経てからの話だと、誰もが思っていたはずなのだから。


それどころかもう12月も終盤に差し掛かった。


というのに、あれから結婚についての話し合いは1度たりとも設けられていない。



「そしてここからが本題だ。じつは音也くんから1枚の手紙を預かっている。ここに、今後の華月苑の方針が書かれているとのこと」



そう言ってお義父様は折り畳まれた便箋を懐(ふところ)から取り出した。

これからの当主は工藤 音也なのだから、そこもすべて任せると。


手紙には何が書かれているんだろう…?