はあっと、手のひらに息を吐く。
こすり合わせて温めて、ぱっと離せば熱はすぐに冷めてしまって。
そんなことをするなら動けばいいんだと、ホウキを握って散らばった枯葉を掃く。
冬が、きた。
冬が、きましたよ。
「一咲!あんたはいつまで掃いてるのよ…!代表と支配人がいらっしゃったから、はやく来なさいって!」
「あっ、はい…」
変わらない呼び声に、小走りで向かった13時過ぎ。
この時間はチェックアウト後であり、チェックイン前。
私たち従業員が少しだけゆっくりできる時間だ。
それにしてもお義父様と音也様が揃っているなんて珍しい。
どちらかがいるときは大体どちらかが外しているというのに。
「今日は皆に大切な知らせがある」
並んだ従業員のなか、私は端に立つ。
「一咲さんはもっと前にどうぞ」と隣の女性スタッフに言われたけれど、ここがいいと意地を張った。