「……アイ…」
“こいつの名前は、アイだ”───そう書いては笑っていた。
スッ、スッ。
すぐにもう1度、彼は私たちに“声”を届けようとしている。
“たくさんの人から愛されるように”
透子さんがさっそく呼んでみると、すぐに反応したアイちゃん。
ナナシのときよりなぜかしっくりきて、子猫も嬉しそうだった。
音也様にだけは最初から懐いていたのも。
音也様と離れたら元気がなくなってしまったのも。
そういうものもあったら素敵だよね。
この程度でいいんだ。
無理にハッキリさせなくていい、それくらいでいい。
「あら…?ちょっと待って……」
すると透子さん、ここで新発見。
「この子、男の子じゃないの!」
「え」
「ほら見て一咲!やだ、そういえばちゃんと確認してなかったわよね…?うそ、アイちゃん男の子よ!」
「……ほんとうだ…」
聞こえる。
笑っている声が。
おまえ男だったのかあ───と、いちばん笑っている確かな“音”が。