「雪……、凍結……してて、車が…、すべった…」



生き残ったのは彼だけだった、と。


そのときやめておけば愛美さんは今も生きていた。

私が華月苑に引き取られることなく、あんな悲しい思いもしていなかった。


ただ、ひとつ。


私にこの人生がなければ、ハル様とは出会えなかっただろう。



「……生きてください」


「…………」


「だったら…、生きてください」



彼女が守ってくれた。
そう思ってもいいじゃない、もう。

あなたに生きてと、私のぶんまで生きてと、彼女からのメッセージなんだって。



「あなたが戻ってくるまで華月苑は私が守ります。なので……生きて」


「……おれは…、おまえに、最低なことを…、言ったんだぞ」


「…はい。それでも私は……音也様に生きて欲しいです」



華月苑はあなたのもの。
必ず、あなたのものにする。

それが唯一、私が私としてできることだ。



「“声が出なかったら生きているとは言えない”と、まえに音也様は言いました」



声を失ったら生きていけない、って。

だったら死んだほうがマシだ、って。