「…そう…か」



さっきまでの時間はなんだったの。

海で笑い合っていた時間は。
甘くてとろけそうなキスを交わした時間は。


だから、ハル様のほうです。


こんな私のことを嫌いになるべきは。



「嫌いなら…、仕方ないよな」



ポタリ、ぽろり。

大粒となって溢れる涙。



「俺が通っていた海軍兵学校が、今は小さな博物館になっているらしいんだ。本当はそこに…、一咲を連れて行きたかった」


「っ…、……ぅ、」


「…泣かないでくれ。どうしても俺はきみが欲しかった、…ごめん」



いつのことを謝っているの……?

唇を合わせたこと…?
それとも、肌を重ねたこと…?



「最近の一咲はずっと元気がない。工藤がいなくなってから元気がないんだ。…彼のこと、きっと大切には思っていたんだよな」



私の頬に触れて涙をすくってくれる手は、私と同じくらい震えている。

最低でひどいことを言っているのは私だというのに、私が泣いてあなたが優しくするのはおかしい。



「このまま俺と一緒に連れていっても、きっとそこに一咲の笑顔はないだろうから」


「……ごめ、な…さい…っ」