砂がついた足を見つめていた私は、隣に腰かける彼が指さしたほうへと視線を移す。


どこまでも横に伸びる1本線。


水平線の捉え方って、たぶん人によって表現方法が変わるんじゃないかなと思う。

私は落ちてしまうギリギリ、って例えるから。



「俺から話してもいいかな」


「……はい」



話したいことがお互いにあった。

また一段と忙しくなってしまった毎日で、ゆっくり話せる時間は今日くらいだ。



「俺、九十九 時榛になろうと思ってる」


「つく、も……?」


「…そう。ツクモさんの養子だ」



陸奥、ではなくなる。

つくも、ときはる。


それもまたいい響きだと、名前が人を表すんじゃなく、人が名前を表してくれるんだ。



「陸奥 時榛は、明治の俺。九十九 時榛は……今ここにいる俺」



とても安心した、というのが最初の気持ち。

彼はこの時代で、彼にとっては未来の世で、つよくつよく生きようとしている。