「お父さまと、お母さまは……」


「はっ、来ないよ。来るわけないだろ…、兄貴のことしか見ていない……あんな親たちなんかが」


「……そう…ですか」



あまり話させるのは良くないかもしれない。

鼻で笑った彼はもう、病気よりも人生に諦めてしまっているようだった。



「……手術…、どうして受けないのですか」


「…そんなの……死ぬため、だ」


「…え……?」


「そのほうが…、おまえも嬉しいだろう」



驚いた。

私は驚いて、いま話している男は工藤 音也なのかと本気で疑った。


あなたはそんなことを考える人じゃなかったはずだ。



「俺がいなければ華月苑は……おまえのものだ。俺なんか所詮は……、部外者でしかないからな」



あなたを信頼している部下がたくさんいる。

あなたがどれだけ華月苑を大切にしてくれていたか、それだけは私も知っている。