「───…きれいな顔……」
私より年上だとは思うが、そこまで変わらないあどけなさも兼ね合わせていた。
さっぱりと短く揃えられた艶やかな黒髪、シャープにも見える背丈にしては意外だった体つき。
まぶたを開けるともっと素敵なのだろうと想像を膨らませてくる、男らしくも甘い顔立ち。
意識を強く保っていなければ時間を忘れそうになるほど、自分に持っていないものばかりで、ぼうっと見惚れてしまいそうだ。
「───っ、そうだ、目が覚めたとき口にできるものとお薬を用意しないと…」
なにをしているの、私。
もう少しで触れてしまう距離まで、無意識にも手が伸びてしまっていた。
ギリギリで止め、立ち上がろうとしたとき。
「一咲さん、彼の様子はどうだい?」
「あっ…、すみません」
ありがとうございます───、
そう続けたのは、普段は厨房に入っている調理スタッフの1人が小ぶりな土鍋を抱えて現れたからだ。