月の光だけが通った部屋。
ここまで綺麗な満月だったんだと今になって気づけたくらいには、今日の私は下ばかり見ていたのだ。
「………して…っ」
「…して、って、」
「こえ…っ、つぶして……っ」
「────……」
言いたくない言葉を言っている悲しさと、声さえなければと本気で思っている恨み。
そんな声にもならないジレンマの先にあったものは、ハル様の泣きそうな顔だった。
どうしてあなたがそんなにも傷ついた顔をしているの。
「…俺の好きな声を、潰すなんて言って欲しくない」
「んん…っ!ふ、…っ!」
「ずっと聞きたかった。やっと……この時代にきて初めて聞けた音なんだ」
すでに敷かれていた1枚の布団の上。
ハル様にしては動きの感じられる所作で、私の身体は寝かせられる。
追いかけるように唇は塞がれて、息を吸う暇もないほど。