「あの子のこと、音也さんはどう思ってる?」
まだ残った何かを繋ぎ合わせて、なんとか懸命に私を自分で引き寄せる。
あなたのために尽くしてきた。
心惹かれていた彼からの気持ちを断ってまで、あなたを選んだ。
『一咲、俺と一緒にここを出ようか』
あんなにも夢みたいで嬉しかった言葉を、私はあなたのために蹴った。
だからここで少しでも、ほんの少しでも、“一咲”に対するやさしい言葉が贈られたなら。
私はこの夜を、仕方がないで受け止められるかもしれない。
「どうせ身寄りのなかった女なら……愛美の代わりに死ねばよかったのにな」
─────………消えた。
ぷつりと、跡形もなく。
「……あ……、ぁ…」
「…愛美?」
「っ……、ぁぁぁ……っ」
消えてしまえ、こんな声。
いらない、いらないよ。
この声を持って生まれて幸せだと思ったことがない。
潰れてしまえばいい、声帯なんか。