彼が先にシャワーを浴びに行ったのは、逆に私を逃げさせなくするため。

シャワーもしていない身体で他の男の部屋になんかいけないだろうと、そんな見えない鎖だ。



「私も…、浴びてきます」


「…ああ」



そのあと私がバスルームに向かい、できるだけ時間をかける。

待ちくたびれて寝てしまっていることを願いながら。



(やっぱり、するんだ……)



目隠し。

今日はしないだろうと思っていた自分が馬鹿みたい。


期待していたんじゃなく、さすがにと信じたかった。


目を閉じた上に、また布で隠してまで。



「愛美」



そうして、彼女の名前を呼ぶ。

こんな形で奪われる初めてなど。
なんたる屈辱だ。


押し倒された身体。


それじゃあ見えるものも見えない、かえって怪我をしてしまう───、

試しにそんなことを言ってみた。



「こうしなければ、お前に会えないんだよ」



わかってた。
わかっていたでしょう。

最初から私を見ていないことなんて。