「しばらくお休みになりましょう。旅館のほうは代わりに私が……、っ、」
断ったら殺すぞ───そんな目を、見てしまった。
「……わかり…ました」
私として、ですか。
それとも愛美として、ですか。
私に慰めを乞うているのですか。
それともそれすら、まだ愛美に求めますか。
こんなことになるのならたとえ風車小屋だとしても、やっぱり止めなければよかった。
「透子さん、一咲さんは支配人とどこへ行っているんですか?」
「……気にしないで。婚約者同士だもの、たまには息抜きよ」
「あんなにも経営第一な人が、こんな時間まで…ですか」
「…今日だけはね、特別なの。ほらハルくんはそろそろ上がっていいわよ」
いやなタイミングに帰ってきちゃったな…。
22時近く、ロビーに戻った私たちの前にちょうど私を探していたらしいハル様がいる。