好きでもない女とキスができるような不誠実な人には見えないし、あのまっすぐさを疑えるはずもない。

彼自身も好きな子に触れたいと、いつかに言っていた。



「あれじゃない?一咲さんの立場を狙って近づいてる、とか?」


「やめてよー。ハルさんはあんたみたいにズル賢くないわよ!」


「それはあんたでしょ!」



憶測ばかりが広がっていく。

これは私が怖じ気づいて本人に確認できないからだ。


あれから顔を合わせることも困難になって、彼を見つけるとどこか避けてしまう。


そんなこと本当はしたくないのに……。


でも、思い出してしまうから。

そして思い出すと、もう1度と、求めてしまいそうになるから。



「まだ赤ちゃんじゃないの…、可哀想に。親とはぐれちゃったのかしら」


「外の水汲み場の前で泣いていたんです」



そんなときだった。

外の作業からロビーに戻ってきたハル様の腕に抱えられている、たったひとつの小さな命。