『わかった。おまえは臆病者だってことだな!』



それは自分だけが知っていると思っていた自分の秘密を、初めて見抜かれた瞬間だった。

呑気に揚々と言っている伊作をここまで恐ろしいと思ってしまうなど。



『…ちがう、俺は本当に、』


『手を出さないことが大事にするってことだとは、限らないと思うぜ俺は』



それから無事に俺たちは一緒に卒業することができたが、その代わり病院に行く頻度が減った。

単純に忙しくなったという理由と、彼女に対する欲が生まれ始めてしまったからだ。


それでも会いにいけば、気のせいだったと勘違いにできる幸福が与えられる。



“ぐんじ、えんしゅう…?”


『ああ、これが終わってはじめて一人前になると父さんも言っていた。俺はもともと操縦士になりたかったから、今回の機会は自分にとっても良いものになると思うんだ』