振り向いてくれた彼女は、胸の前に持っていった手をぎゅっと握る。
『俺の友人なのだけれど、包帯が取れてきたってうるさいんだ』
大丈夫、だいじょうぶ。
俺はきみに痛いことは何もしない。
無理強いするつもりもなければ、やりたくないのならそれでいい。
────こくん。
ひとつ、うなずいてくれた。
『え、やさし…、お嬢さん、もっと強く巻いてもらって大丈夫だぜ?ちょっとくすぐったいから、笑いそうになっちまうから俺』
『伊作、だまれ。集中してるんだから邪魔してやるな』
『ええ…、なんでおまえがそこまで怒ることがあるんだよ。ほらせっかく巻き直したってのに、これじゃあ逆にすぐほどけそ───いでっ!!』
おい頭まで怪我したらどうする!!と、俺からのこぶしを受けた伊作は喚く。
ゆっくり、やさしく、自分の速度で。
誰かにこうして実践したことは初めてだったのだろう。
きっと彼女はいつも雑用ばかりを押し付けられていたんだ。