大降りの雨風に打ちつけられたのだろう婚約者は、顔を見るだけでいつも以上にゾクリと背筋を凍らせてきた。
が、すぐにパッと視線を逸らした私。
だって、その背中。
真っ裸の人間がおぶられていたから。
体つきから男性ということだけは分かった。
遭難者だろうか。
まさかこんなことが起きるとは想定外で、みんな揃っててんやわんやだった。
「いいか皆の者、こんなときこそお客様のおもてなし最優先でいこう」
しかし、彼のリーダーシップだけは本物。
その表の顔だけで生きてくれればいいのに…と、私は切実に思って願う。
「外がどんなに荒れていようが、華月苑だけは安心安全で穏やかな雰囲気を保とう」
濡れた髪をフェイスタオルで拭きながら、乾いた袖口のボタンを留め、爽やかに放った支配人。