『巻き直してもらうだけなら、あの子でもいいんじゃないか伊作』



俺が目線を移した先。


先ほどから一生懸命、廊下の拭き掃除をしていた女の子がひとり。


ここで働いている子なのだろう。

まだあどけなさの残る後ろ姿だが、誰よりも切磋琢磨に働いていた。


今度は棚の備品をひとつひとつチェックして、小さな手で包帯を巻いている。



『あー…、あの子には頼まないようにって、周りからも言われているんだよ』



しかし伊作は、そんなことを言ってくる。



『なぜだ。ここで働いている子じゃないのか』



見るからに仕事が丁寧だと分かる。

同じように働く女たちと駄弁ることもなければ、黙々と淡々と、小さな仕事をコツコツ。


疑いもなく首を傾けた俺に、伊作はちょいちょいと手招きをして声質を下げた。