『今だって時榛にとったらこれ程ない好機だってのに。そんな何食わぬ顔して俺を優先させちまうんだもん』
『…居させたほうがよかったのか?俺は伊作とふたりで話すために見舞いに来たんだ』
『ほらほら、そーいうとこ。困るよ、素晴らしい友を持っちまったな俺は』
よく分からない。
そう言った俺さえ、伊作から見れば『恨めない』らしいのだ。
今日学校であったこと、学んだこと。
俺は伊作と隅々まで共有して、穏やかな会話も交わした。
『ん…?ちょっと包帯が緩んできたな』
そろそろ帰ろうかと腰を上げたときだった。
伊作は左足に巻かれた包帯に気づき、キョロキョロとあたりを見渡す。
『わるい時榛、さっきの看護婦さん呼んでもらっていいか?巻き直してもらう』
その看護婦でないと駄目か。
できることなら俺は、別の看護婦を呼んできたい。
ああやって俺が何か言葉を返しただけで四方八方から聞き込んでくる女は苦手だった。