ただ、後日談として言えば。

伊作の怪我がなければ、俺は彼女に出会うことができなかったのだ。



『それでそれで!俺ってこう見えて先生から期待されてる1人でさ~』


『まあ、すごい』


『いずれ大海原を背負う男になる予定の八田 伊作!ぜひ覚えて欲しいなお姉さん』


『まあ、すごい』


『ちなみに恋仲の女の子はまだいないんだ。絶賛募集中ってところ?』


『まあ、すごい』



どう考えても相手にされてないだろ…。

あんなに入院は嫌だと騒いでいたにも関わらず、若い看護婦と楽しそうに話している友人の姿が見える。


話すというより、あれは口説く、だ。


手土産まで用意して損したな……。

次からは持ってこないようにしよう。



『お、時榛!来てくれたのか!』


『帰るところだった』


『ちょちょちょっ、なんでさ!来てくれて嬉しいよ、退屈してたんだ』